しんちゃんの言葉に、少しだけ口に入れる。
とても甘くて、おいしかった。僕も、かなり疲れていたようだ。
気が付けば、ペロリと食べてしまっていた。
「……」
しんちゃんは、チョコビの箱を持ったまま、僕の様子を見ていた。
そして、僕の前に、またチョコビを出した。
「いっぱい食べるんだぞ」
彼の言葉に、僕はまたペロリと食べた。
そしてしんちゃんは、満足そうにしながらチョコビの箱をリュックに入れた。
(あれ?しんちゃん食べないの?)
僕の言葉に答えないまま、しんちゃんは立ち上がった。
「……もう少し、歩いてみよ」
そしてしんちゃんは、歩き出した。
しんちゃんも、しばらくご飯を食べていないから、きっと腹ペコのはずだ。
彼のことだから、普通なら、真っ先にチョコビを食べるはず……
それなのに……
(……もしかして、しんちゃんは……)
……僕は、本当にバカだ。気付いてやれなかった。
自責の念と苛まれながらも、心はとても暖かい……
複雑な気持ちになりながら、僕は彼の隣を歩いていった。
それから少し歩いたあと、さすがのしんちゃんも限界が来たようだ。
道端の草むらに、倒れるように寝転がった。
「……今日は、ここで寝よ」
絞り出すように、そう呟く。
僕は彼の隣に丸まる。
耳には、彼のお腹の音が聞こえていた。それでもしんちゃんは、一言も空腹を訴えない。
きっと、僕に気を使ってるのだろう。
彼の優しさが泣きそうなくらい嬉しくて、涙が出るほど、自分が不甲斐なく思った。
「……シロ、空がキレイだぞ」
ふと、しんちゃんは声を漏らした。
(空?)
彼の視線を追って空を見上げた。
(……うわぁ……)
思わず、感嘆の声を出す。