(僕が聞きたいよ……)
そうこうしているうちに、トラックは道の途中のコンビニに立ち寄った。
運転手がトラックを離れた隙に、僕達は荷台から降りる。
そしてその場を走って離れていった。
暗い道が続いていた。その中をしんちゃんと歩く。
しばらくすると、だいぶん目が慣れてきた。
今日は雲もなくて、月明かりが影を作る。
小さな影と、凄く小さな影……二つの影は、離れることなく、横に並んだまま揺れていた。
歩く道では、誰ともすれ違わなかった。
時計がないから分からないけど、時刻はかなり遅いだろう。
そんなところを子供と犬が歩いているのは、かなりおかしな様子だろう。
……本音を言えば、ここで警察官が通るのを期待していた。
もし警察官が来たら、きっとしんちゃんは保護される。
そして、家に帰してくれるだろうし。
でも、現実は甘くないようだ。
いつまで歩いても、どこまで歩いても、誰もいない畦道が続いていた。
「……オラ、疲れたぞ……」
しばらく歩いた後、しんちゃんは路肩に座り込んだ。
顔を見ると、かなり疲労が溜まっているのが分かる。
さっきからしんちゃんの口数が少ない。
もしかしたら、しんちゃんも色々不安なのかもしれない。
ここがどこかも分からない。帰れるかも分からない。
しんちゃんも、まだ5歳だ。
どれだけ強がっても、子供心は不安でいっぱいだろう。
(しんちゃん、大丈夫。きっと帰れるよ)
僕なりに、声をかける。
少なくとも、キミは一人じゃない――
それを伝えたかった。
「――腹減ったのか?よしよし、ご飯にしような」
しんちゃんは、どうやら勘違いをしているようだ。
この時ほど、喋れないのを悔しいと思ったことはない。
……今の僕に出来ることは、隣で彼を暖めることだけだった。
「ほい、シロ」
しんちゃんは、バックからチョコビを取り出し、目の前にこぼした。
「いっぱい食べるんだゾ」