「――それにしても、このようなところでしん様……失礼、しんのすけさんと再会するとは、夢にも思いませんでした」
「オラもだよ。まさか、この工場の元請けがあいちゃんの会社だったなんて……しかも、あいちゃんが視察に来るとは思いもしなかったよ。世間って狭いね」
「そうですわね。……でも、だからこそ人生とは楽しいのかもしれません」
あいちゃんとオラは、感慨深く話していた。
「……でも、あいちゃんは変わらないね。とても凛々しくて、カッコいいよ」
「そんな、しんのすけさん……それを言うなら、しんのすけさんもですよ」
「オラは……そんなことないよ。だって、昔みたいにバカやってるわけじゃないしね。ガッカリしたでしょ?」
「いいえ!そんなことありません!」
あいちゃんは、語尾を強くしてオラの方に体を向けた。
「確かに、今のしんのすけさんは変わられました。でも、それはいいことなんです。
人は、時間の流れと共に、年齢を重ね、体を変化させていきます。
――ですが、心は違います。
心だけは、成長するか否かは、その人自身にかかってます。若くして立派な心を持つ者もいれば、歳だけを重ねて、いつまでも心を成長させない者もいます。
……しんのすけさんは、きっと前者です。しんのすけさんは、歳相応に心も成長しているんです。
そんなしんのすけさんは、素敵だと思います……」
「あいちゃん……ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ。そんな自覚はないけどね」
「いいえ。しんのすけさんは、やっぱりしんのすけさんですよ。行動が変わっても、それは変わっていません」
あいちゃんは、微笑みながらそう言ってくれた。
そんな彼女の言葉に、どこか救われた気がした。
父ちゃんと母ちゃんがいなくなってから、オラはしっかりしようと思った。
オラがしっかりしないと、ひまわりを育てることが出来ない。そう思っていた。
それでも、オラの中には不安があった。自分はきちんと出来ているだろうか。大人として、ひまわりの手本のとなれるだけの人になっているだろうか。そんなことを考えていた。
そしてあいちゃんは、オラのそんな不安を払拭してくれた。
それが、とても嬉しかった。