【クレヨンしんちゃん】しんのすけ「……父ちゃん、母ちゃん。ひまわりは今日も元気です。――行ってきます」誰も知らない22年後・・・

ここぞとばかりに、自らの武勇を示すかの如く、逞しい方々は飛び掛かる。
勇ましい。実に勇ましい。
覆面達は銃を使う暇もなかったようだ。肉体と肉体による、激しい乱闘が始まる。
まるで映画のワンシーンのようだ。
オラは見物客だけど。しかし、アピールするには確かに最適かもしれない。

何も出来ないにしても、オラも何かすべきだろうか―――

――その時、オラの目が捕えたのは、恐怖のあまり涙するあいちゃんの姿だった。

その姿を見たオラは、無意識にあいちゃんの方に走り出していた。
そして震える彼女の体を掴み、声をかけた。

「あいちゃん!!大丈夫!?」

「し、しんのすけさん……」

とりあえずは大丈夫のようだ。とにかく、彼女をどこかへ避難させないと……

「あいちゃん!!まずここを逃げ―――!!」

「――試験!!終了~!!」

突然、試験官のおじいさんが声を張る。その声に、全員が動きを止めた。

「………へ?」

全員が動きを止める中、さっきまで泣いていたあいちゃんがすくりと立ち上がった。

「ええと……あい、ちゃん?」

「……しんのすけさん、騙してごめんなさい」

「……どういうこと?」

すると、あいちゃんはクスリと笑った。

「――これが、試験なんですよ。私の身が危なくなった時、真っ先に私に駆け寄って来るかどうかを確かめるための……」

「え?え?で、でも、あいちゃん震えてたし……それに、泣いてたし……」

オラの言葉に、あいちゃんは更に微笑む。

「……私の演技も、なかなかでしょ?」

(あ、あいちゃん……そりゃないよ……)

あいちゃんの説明に、筋肉隆々の男達はぶーぶー文句を言い始める。

「ナンダヨソレ!!」

「聞イテナイヨ!!」

……とまあ、好き勝手叫びまわっていた。
だがここで、試験官の爺さんが口を開く。

「――お黙りなさい!!」

それまでの彼とは全く違う、覇気のある言葉だった。
試験官の言葉に、男達は固まる。

「……お嬢様の身が危ないというのに、自分の評価のために、お嬢様を差し置いて犯人に飛びかかるとは何事ですか!!
あなた方は、これが何の試験か分かってるのですか!?
あなた方の行動は言語道断!!プロとしての意識が欠如し過ぎている!!――失格で、然るべきです!!」

「……」

男達は、黙り込んだ。
暑苦しい男達は、今にも泣きそうな顔をしていた。
鬼の目にも涙、か……

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