そして、試験官は口を開いた。
「――さて……そろそろ試験を開始―――」
――その時……
「――全員動くな!!」
「………へ?」
突然、その場所に男の怒鳴り声が響き渡った。
その声の方向を見ると、そこには、銃を構えた数人の覆面姿の男が立っていた。
「ええと……これは……」
よく状況が呑み込めない。全員が、動きを止めていた。
すると覆面達は、銃を向けてさらに叫んで来た。
「大人しく、酢乙女あいを渡してもらおうか!!」
(これって……)
相手は、銃を持っている。酢乙女あいを連れて行こうとしている。
それが意味するのは………誘拐?
(えええええええ!!??)
いくらなんでも、えええええ!?
あいちゃんは老人の陰に隠れて震えている。
超大企業の御令嬢だからだろうか。誘拐して身代金って流れだろう。
不思議と、頭は冷静だった。
あまりに現実味が無さ過ぎて、第三者的立場にいる感覚なのかもしれない。
「――チョット待チナ!!」
「―――ッ!!」
突如、逞しい方々が覆面達の前に立ちはだかった。
「オ嬢様ニハ……手ヲ出サセナイゼ!!」
そして男達は、一斉に覆面達に向かって行った。