「……もしもし、野原です……」
「あ!野原さんですか!?」
「は、はい……あの……」
「野原ひまわりさんという方は、ご家族におられますか?」
「はい。僕の妹ですが……」
「ああ、良かった!――課長!ご家族の方に連絡取れました!」
電話の向こうの相手は、誰かに報告していた。とてもガヤガヤしている。
……その様子は、以前経験したことがあった。
「あ、あの……」
「ああ、失礼。私、◯◯警察署の者ですが――」
「――」
目の前が、真っ白になった。
足の力は抜け、その場に崩れるように座り込んだ。
「大丈夫ですか!?」
「――え?あ、はい……それで、ひまわりは……」
「実は、ひまわりさんが事故に遭いまして……」
「……そ、それで、無事なんでしょうか――」
「……はい。命に別状はありません」
「そ、そうですか……」
身体中の緊張が、一気に解けた気がした。
だが警察官は、言いにくそうに続けた。
「――命に別状はありませんが……ただ――」
「……え?」
「―――」
「―――」
……それ以降の会話は、よく覚えていない。
「――いやぁ!参っちゃった!」
「まったく……ケータイ忘れてた時に車に跳ねられるなんて……おかげで、警察官もお前が誰なのか分からなくて苦労したみたいだぞ?会社だって閉まってるし……」
「いやぁ、面目ない……」
「まあ、命が無事だっただけマシだよ」
「うん。そうだね」
ひまわりは、帰る途中に事故に遭ってた。
普段あまりものを持ち歩かない性分が災いし、確認に時間がかかってたとか。
とにかく、命が無事なら、今はそれでいい。
――ただ……