「……足は、どうだ?」
「……うん。感覚、ないんだ。たぶん、もう歩けないって……」
「そう、か……」
ひまわりは、歩けなくなっていた。
腰を、強く打ったらしい。
外見上では、彼女は悲観してはいないようだ。
母ちゃん譲りの明るさのおかげだろうか。
それでも、心の内は分からない。
「……あ、そろそろ検診の時間だよ」
「……分かった。後でまた来るよ」
「うん。……お兄ちゃん、ごめんね」
「なんでお前が謝るんだよ。生きてるだけで、本当に良かったよ」
「うん……」
そして、オラは病室を出る。
その直後、病室から、こもった声が聞こえてきた。
「……ひぐっ……ひぐっ……」
「………」
その声に、心は激しく痛む。
でもこれからは、オラがもっと支えないといけない。
そう決心し、ひまわりの声が漏れる病室を後にした。
ひまわりは、しばらく入院することになった。
その間、オラは家の整理をすることにした。
あいちゃんに、事情を説明ししばらく休みを取ることを告げた。
快く了承してくれたことに、本当に感謝してる。
おそらく、これから車椅子が主体となる。
ほんの少しの段差が、彼女にとって大きな障害だろう。
段差という段差に、片っ端からスラロームをつける。
問題は、台所と洗面所、浴室だろう。
こればかりは、改築しないと無理だろう。
困り果てていた、その時――
「――ごめんください」
突然、誰かが訪ねてきた。
「はーい……って、あいちゃん?」
「ごきげんよう、しんのすけさん」
そこには、あいちゃんがいた。
「どうしたの、こんなところに……」
するとあいちゃんは、ニコリと笑みを浮かべた。