「しんのすけさん、実は、お話があるのですが……」
「話?」
「はい。我が酢乙女グループでは、介護用品にも力を入れています。その新商品が出来たので、テスト運用をしてもらいたいのです」
「テスト運用?」
「はい。――黒磯」パチン
あいちゃんが指を鳴らすと、家の中に、一台の車椅子が運び込まれた。
「これは……車椅子?」
「はい。ですが、ただの車椅子ではありません。
……百聞は一見にしかず。――黒磯」
「はい……」
彼女の号令に、黒磯さんが車椅子に座る。
「まず、これは内部バッテリーを付けており、軽く車輪を回すだけで、スムーズに移動することが可能なんです」
「へぇ……電動自転車みたいなものか……」
「そして、最大の特徴が……」パチン
再び彼女は指を鳴らす。
すると、黒磯さんが座っている座席が、上に延び始めた。
「これは……」
「座席は、最大1mまで延びることが可能で、床下20㎝まで下げることもできます。これなら、車椅子の上り下りも容易く、少々の高いところの作業も出来る、新型車椅子なのです」
「凄い……でも、なんだか悪いよ」
「それには及びません。先ほども言ったとおり、これはテスト運用です。月に一度レポートを提出してもらいます。
こちらも、貴重な資料にさせてもらいます」
「……分かった。ありがとう、あいちゃん」
「礼には及びません。……しんのすけさん、私に出来ることがあれば、何でも言ってくださいね」
そして、あいちゃんは帰っていった。
こうして、ひまわりを迎える準備は、着々と整いつつあった。