それから、ひまわりの退院の日を迎えた。
「うわぁ……!」
ひまわりは、家の変わりように声を上げる。
家の中は、すっかり変わっていた。
タンスは全て一回り低いものに変え、大概のものが車椅子のままでも手の届く位置に置いた。
まるでリフォームでもしたかのような室内は、久しく家に戻らなかった彼女にとって、新鮮なものだろう。
「これなら、だいぶん過ごしやすくなると思うから」
「……うん。ありがとう」
言葉とは裏腹に、ひまわりからは、さっきまでの元気はなくなっていた。
顔も、どこか辛そうにしている。
「……どうした?」
「……ごめんね、お兄ちゃん。私のせいで、お兄ちゃんに迷惑をかけて……」
「……」
ひまわりは、完全に俯いてしまった。
それは、彼女の心からの言葉なのだろう。
――だからこそ、オラは彼女にデコピンをする。
「ていっ」
「あいたっ!」
ひまわりは、おでこを押さえたまま、目を丸くしてオラを見ていた。
「なに妙な遠慮してんだよ。オラとお前は他人か?」
「……」
「違うだろ。家族だろ。お前の、しょうもない遠慮なんて、オラには通じないからな。
お前が歩けないなら、オラが後ろを押してやる。オラは、お兄ちゃんだからな。
――だからお前も、妙な気を使うなよ」
「……うん……うん……!」
ひまわりは、涙を堪えながらずっと頷いていた。
……そうだ。オラは、ひまわりのお兄ちゃんなんだ。
オラが、ひまわりを支えるんだ。
改めて、そう決意した。