「――しんちゃん聞いてよ!!」
それから数日後の夜、まさおくんは血相変えて家に飛び込んできた。
靴を乱雑に脱ぎ捨てたまさおくんは、そのまま居間にいたオラの元へ駆け寄る。
「あ、あの男のことを調べたんだけど……!!」
調べた結果……そんなもの、分かりきっていた。
「――チーターだったんでしょ?」
「そうそう!あの男、実はチーター……!!……って、何で知ってるの?」
まさおくんは、目を丸くしていた。
「この前、たまたま会ったんだよ。ねねちゃん、オラ達のこと話してたみたいだよ?」
「え!?ねねちゃんが、僕のことを!?」
(オラ達って言ったのに。ずいぶんポジティブなことで)
「で!?どうだった!?」
「どうって……」
「チーターだよ!話したんでしょ!?」
「ああ、そういうこと。少ししか話してないけど、いい奴だよ、彼」
無駄にイケメンだったけど。
「しんちゃん!騙されてるよ!」
まさおくんは激怒した!
「そんなの、ただの見せかけだよ!フェイクだよ!本性はもっと、黒いはずだよ!」
まさおくんは自信満々に言い放つ。……しかしまあ、相変わらず言ってることは無茶苦茶だ。
どうするか悩んだけど、さすがにそろそろ言うことにした。
「……ねえ、まさおくん。オラは、キミの友達だからさ、だからこそ、敢えて言わせてもらうね」
「……え?な、何を……」
「――いい加減にしなよ、まさおくん」
「――ッ!?」
オラの言葉に、まさおくんは言葉を飲み込んだ。
「……しんちゃん……」
「まさおくん、正直に言うけど、今のキミは見てらんないよ。ねねちゃんが好きなのは分かるし、盗られたくない気持ちも分かる」
「……」
「……でもね、今のキミはあんまりだ。話してもいないのに勝手に全部決めつけて……そんな姿を見て、ねねちゃんがキミに好意を持つと思ってるの?」
「……そ、それは……」
「キミにはキミのいいところがあるんだ。だから、もっと素直にねねちゃんと向き合いなよ。
……今度、オラとフタバ幼稚園に行こうよ」
「……うん。ありがとう、しんちゃん……」
まさおくんは、ようやく落ち着きを取り戻したようだ。
正直、こんなことを言うのは忍びないところもある。だけど、まさおくんのことを知るオラだからこそ、言う必要があった。
でも最後は、まさおくんも分かってくれた。
それだけで、言って良かったと思う。
「……しんちゃんと一緒に、敵情視察だ……」
まさおくんは、ぼそりと呟く。
……分かってくれたんだよね?