それから数日後、オラとまさおくんは、フタバ幼稚園に来ていた。
久々に見る幼稚園は、少しだけ古ぼけて見える。あれから20年以上だし、それもしょうがないのかもしれない。
それに、建物も校庭も、外の遊具も、物凄く小さい。
……それでも、独特の匂いと、踏み締める土の感触は、昔のままだった。
あの頃オラ達は、この幼稚園で毎日を過ごしていた。
絵本を読んで、歌を歌って、絵を描いて、走り回って、笑いあって、時々ケンカして……
ここに立つだけで、まるでモノクロの投影機のように、昔の光景が脳裏に甦っていた。
「……懐かしいね、まさおくん……」
そう呟き、まさおくんを見る。
まさおくんは、まるで威嚇するかのように、キョロキョロと見渡していた。
(……おい)
「……おや?キミ達は……」
ふと、オラ達のもとに、白髪のおじいさんが近寄ってきた。
「……あ、勝手に入ってすみません。オラ……僕達は、ここの卒業生なんです。久々に、遊びに来ました」
当たり障りなく、挨拶をする。
すると老人は、朗らかに笑った。
「……もちろん、覚えていますよ。よく来てくれましたね、しんのすけくん、まさおくん――」
……園長先生は、優しく微笑む。その表情もまた、昔のままだった。
「それにしても懐かしいですねぇ。もう、20年以上になるんですよね」
オラとまさおくんは、教員室に案内された。
室内には誰もいない。遠くからピアノの音と、子供たちの元気な合唱が聞こえていたから、おそらく授業中なのだろう。
「はい。顔を出せず、すみませんでした」
「いえいえ。あなた方が元気であれば、それで私は満足なんですよ」
園長先生はニコニコとしていた。
口ではそう言っていても、やはりこうしてオラ達が顔を出したのが嬉しいんだろう。
それにしても、園長先生の雰囲気はすっかり変わっていた。
昔の極道丸出しのような容貌はない。太ったことも原因かもしれない。とにかく、朗らかで、とても優しそうな印象を受ける。
園長先生の性格を考えるなら、今の姿が一番しっくりくる気がする。
「……ところで、突然園を訪れて、何か御用があるんですか?」
「あ、ああ……実は、ここで働いているねねちゃんとチーターが働いてるって聞いたんで、懐かしくなって……」
チーターたちの様子を見に来たってのは、一応黙っておこう。
「あ、なるほど。……それなら、授業風景、見てみますか?」
「――いいんですか!?」
オラより先に、まさおくんが反応を示した。
それまで黙っていたのに……なんとも、現金な奴だ。