【クレヨンしんちゃん】しんのすけ「……父ちゃん、母ちゃん。ひまわりは今日も元気です。――行ってきます」誰も知らない22年後・・・

「――いっくよー!」

チーターは、子供たちに向けてサッカーボールを蹴る。きれいな放物線を描いたボールは、ワンバウンドして子供たちの方向に飛んでいった。
子供たちははしゃぎならボールを追う。実に、微笑ましい光景だった。

授業が終わったあと、幼稚園の校庭で、子供たちは先生たちと遊んでいた。
そしてそこには、普段はいない者の姿も……

「――いっくよー!」

まさおくんは、子供たちに向けてサッカーボールを蹴る。低い弾道のボールは、まったく別のあさっての方向に飛んでいった。

「もう!まさおお兄ちゃん!ちゃんと蹴ってよね!」

「うぅ……ご、ごめん……!」

まさおくんは半泣きになりながら、茂みの中に入り込んだボールを回収していた。

オラとまさおくんもまた、子供たちと遊んでいた。
子供と遊ぶのは、正直にいえば疲れる。彼らは疲れを知らず、全力で向かってきていた。
でも、その屈託のない笑顔と声は、自然と心を和ませる。悪くない。

「まさおくん、ちっとも変わっていないわね」

その光景を見ていたオラに、ねねちゃんは近づき話しかけてきた。

「……うん。そうだね……」

オラも微笑を返し、少しの間、校庭で遊ぶ子供たちと、子供と戯れるチーター、子供に翻弄されるまさおくんを見ていた。

「……なんだか、不思議じゃない?」

子供たちを見ていたねねちゃんは、ふと呟いた。

「不思議?」

「うん。――だって、今から20年くらい前には、あそこを走ってたのは、私たちだったのよ?」

「……ああ、そういうことね。そう考えたら、確かに不思議な感じがする」

「でしょ?……子供のころは、何も考えずにああやって走り回って……世の中なんてほとんど知らないのに、まるで全部分かってたかのようにリアルおままごとなんてして……。
――ほんと、子供だったわ……」

「……ああ、実はね、オラ達、ねねちゃんのリアルおままごとが少し苦手だったんだよ?」

「そうなの?」

「うん。だって、やっていて重かったし、もっと楽しいことをしたかったしね」

「言ってくれればよかったのに……」

「言えるわけないよ。ねねちゃん、怒ってただろうし……」

「……そんなに、私って怖かった?」

「うん。すっごく」

「はっきり言うなぁ……」

ねねちゃんは、ばつが悪そうに苦笑いをした。

「ハハハ…!ごめんごめん。――ただ、オラ達はずっと一緒だったね。リアルおままごとにしても、かすかべ防衛隊にしても……」

「かすかべ防衛隊かぁ……。懐かしいね」

「ケンカもしてたけど、あの毎日があったからこそ、オラ達はこうして今でも繋がってる。それって、すごく幸せなことだって思うんだ。
時間は色んなものを変えてしまう。建物だって古くなるし、オラ達にもそれぞれに立場や環境があって、昔みたいに集まることも難しいし。
――でも、それでも変わらないものもある。それが、今のオラ達なんじゃないかな……」

「……しんちゃん、ホントに変わったね。なんていうか、すごく大人になった感じ。実際大人だけど。
とても、昔お尻を出して走り回ってたようには見えないわね」

ねねちゃんは、少し意地悪そうにオラを見た。

「……ねねちゃん。それは言わないで……」

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