少し時間が経った頃、風間くんの方を見る。
どこか落ち着かない様子で、表情を伏せていた。
……それも、無理もないのかもしれない。
「……いきなり呼び出したりして、ごめん」
「……別にいいよ。それよりしんのすけ。用件、なんだよ」
風間くんは、目の前の景色を見つめたまま、急かすように訊ねる。だがその口調から、おそらくは、用件など分かっているようだった。
「ああ……。風間くん、この公園に、見覚えあるよね?」
「……」
「こんなところに呼び出したのは、“あの日”のことを聞こうと思ったんだ……」
「……まあ、そうだろうって思ったよ。まったく、誰に聞いたんだか。よりによってここに呼び出すなんてな。
――しんのすけ、ちょっと冗談が過ぎるぞ」
風間くんは、ようやくオラの方を向いた。
一つは、オラの用件が予想通りだったことから、開き直ったのかもしれない。
……ここは、ぼーちゃんが、ひまわりと風間くんを見た公園だった。
「……聞くも何も、普通の話だよ。付き合っていた彼女から、僕がフラれた。
――ただ、それだけのことさ。聞いても、つまらない話だよ」
風間くんは、淡々と話す。
それは間違いない。だが、それだけじゃない。風間くんは、話を早く終わらせようとしている。
つまりは、オラに話しにくい何かがあるということ。
「……風間くん、友人としてお願いするよ。あの日、何があったの?」
「……」
「凄く言い辛いことかもしれない。だけど、話して欲しい。
それはきっと、オラが知らなきゃいけない、とても重要なことだと思うから……頼む……」
「………」
風間くんは、オラの目を見ていた。何かを探るように、確かめるように。
そんな彼を、オラは見続けた。視線を逸らさず、ぶつけた。
「……はあ。そう言えば、お前も強情だったな、しんのすけ……」
大きく息を吐いた風間くんは、諦めたように呟く。そして視線を前に戻し、目を細めて話し出した。
「……もう、聞いてるかもしれないけど。僕な、海外の支社を任せられることになったんだよ」
「……ああ、聞いたよ」
「だろうな。――ホント、大出世だよ。言わば、僕は支社長になれるんだ。
これまで頑張ってきた苦労が実ったんだ。こんなに嬉しいことはない。僕は、意気揚々と彼女――ひまわりちゃんに報告したんだ」
「………」
「そしたらね、彼女言ったんだ。“私は、どうなるの?”って。僕は、すぐに彼女が言わんとすることが分かったよ。
……彼女は、本気だったんだ。本気で僕と、一生添い遂げるつもりだったんだ。だから僕が海外に行くことに対して、自分はどうなるのかって聞いてきたんだよ。
本当に、嬉しかったな。海外の支社を任され、好きな女性に本気で想われて……人生で、最高の瞬間だった」
風間くんは、少し照れるように話していた。……でも、その顔は長くは続かなかった。すぐに視線を落とし、呟くように話した。
「――しんのすけ、これから先は、怒らずに聞いてほしい」
「……分かった」
オラの返事を待って、風間くんは切り出す。力強く。はっきりと。
「……彼女の想いに触れて、僕は決めたんだよ。一生、彼女を大切にしよう。添い遂げようって。
――だから僕は、彼女にプロポーズしたんだ。――結婚を、申し込んだんだよ」
「………」
雨は、更に激しさを増していた。
