「そしたらさ、見事にフラれたよ。僕の思い違いだったみたいだ。……まったく。カッコ悪い話だよな、ホント……」
彼はそう話しながら、苦笑いを浮かべていた。
だけど、オラは気になっていた。
ひまわりは、なぜ風間くんとの別れを選んだのだろうか……。
彼女の想いは、オラが見ても分かるくらい本気だった。にも関わらず、彼女は別れを選んだ。
……その理由は、容易に想像出来た。
だからこそオラは、両手を握り締めた。握る拳は震える。我慢するのに、必死だった。
「……風間くん。ひまわりは、なんて言ってた?」
「……」
「……教えてくれ。風間くん……」
風間くんは、少し躊躇していたようだ。それでも、話してくれた。
「……彼女が言ったのは……」
「………」
「―――――、―――――」
「………」
風間くんの言葉は、囁くように、静かにオラの耳に届いた。
雨音は激しく響く。だけど彼の声は、それを潜り抜け、やけにはっきりと聞こえた。
(………クソ……)
思わず、そう思った。
それは、オラ自信に対する言葉だった。
風間くんと別れ、オラは家路につく。
雨は一段と強く降り注いでいたが、オラには傘をさす気力すらなかった。
(……ひまわり……)
ずぶ濡れになりながら、雨の中に彼女の姿を思い浮かべる。
大切な家族。大切な妹。
いつも明るく、笑顔を向ける彼女。
……オラの、たった一人の、家族……
「………」
無言で、玄関の扉を開ける。
「――おかえりー」
ドアの音を聞いたのか、ひまわりは奥から出て来た。
「うわっ!ずぶ濡れじゃない!お兄ちゃん、傘持っていかなかったの!?」
雨に濡れたオラに、ひまわりは驚いていた。
しかしオラの耳は、彼女の言葉を素通りさせる。
ひまわりの顔を見た瞬間、風間くんの言葉が脳裏に甦っていた。
―――彼女、泣きながら言ってたよ。“お兄ちゃんを一人には出来ない”って―――
「……ひまわり……」
無意識に、口が動いた。
「うん?なぁに?」
一度目を閉じ、頭の中の想いを整理する。
ひまわりの言葉、顔……そして………
「――この家を、出ていけ………」
