――――
「メス!」
――――――
ひろし「はあ…はあ…」
しんのすけ「…」
ひろし「はあ…………はあ………」
しんのすけ「…」
ひろし「………嘘だよな?」
しんのすけ「…」
ひろし「おい、冗談だよな?」
医師「……」
ひろし「なあ、はっきりしてくれよ」
医師「…残念ですが」
目の前の白いベッドには
まるで化粧をしたかのように白い顔で眠るみさえが横たわっていた。
しんのすけ「…」
ひろし「……嘘だよな」
ひろし「おい!みさえ!起きろ!!目を覚まさって!!」
体を揺すっても
頬をつねっても
みさえは目を開けることはなかった。
医師「…癌は胃だけでなく、至る所に転移していました。…もう、手の施しようがありませんでした。」
ひろし「なんでだよぅ…なんで…なんでなんだよ!!あんた、助かるって言ったじゃないか!!なんでこうなるんだよ!!!」
医師「抗がん剤は、奥さんの体力を著しく奪っていきます。しかし、奥さんにはもう食べ物を消化する体力も残ってなかったんです」
ひろし「な……に」
医師「少し前から、点滴による栄養補給を24時間休まずに行い、凌いでいたんです。」
医師「点滴に変えた時点で、もう…手遅れだったんです」
ひろし「そんな…」
しんのすけ「……」
「すぅ……すぅ……すぅ」
みさえの眠るベッドの横には、同じ顔で眠る赤ちゃんが小さな小さな寝息をたてていた。
小さな命は
大きな存在と引き換えにに、無事生まれたのだった。
翌日、
みさえのお通夜が行われた。