病院嫌いのお婆さんが病院行ってしかも入院、それだけで緊張しきってた彼女、
反動で気が抜けたみたいで。「大丈夫?」「はい。」頭に手乗っけて、ぽんぽんやって。
「良かったよ。」「心配して損した。」「損したゆーな。」「あは。」わしわしやって。
やっと、彼女の普通の笑顔になって。それで俺も安心して。
彼女がぽん、ってベット叩いて。横座らされて。くたっと力抜いて、もたれかかられて。
「…お兄ちゃん、いてくれて良かったー…。」お婆さんと同じ事言って。
「信じてちゃっていいんですか?」いきなりで。「何?」「病院でおばーちゃんと話した事。」
それか、って感じで。「うん。」それだけ言って。頷いて。彼女の反応待った。
「…あは。信じましたからね。」「うん。」「約束ですよ。」「うん。」立て続けに、頷いて
俺なんかでも、支えみたいなものになってるっぽい。そんな事を思うと、責任感じだして。
ちょっと重みを感じはしたけど、それも全部ひっくるめて彼女なんだと思った。
その日、彼女は定時で帰った。帰る前に「また泊めてください。」シャツ引きながら言われて。
返答に困ったけど、やっぱりダメとは言えなくて。「いいよ。」って言ってしまって。
「あは。やっぱり、お父さんみたいだったです。」そんな事言って。お互い照れた。
七月の末。彼女とお婆さんの引っ越しを手伝った。
福祉科の担当さんの勧めで市営住宅への入居希望を出してみたら、
生活保護世帯で高齢者と義務教育中の児童の家庭は優先順位が高くて。すぐ決まった。