若いお巡りさんに呼び止められて。彼女の年齢とか俺の立場とか聞かれて。素直に答えて。
彼女を家に送ってる所だと言うのは信じて貰えて。もう少し早く返すようにと言われて。
お巡りさんの口調が丁寧で、印象が悪くなかったから腹が立ったりはしなかった。
けどその話を友達にしたら「犯罪の臭い、したんじゃない?」そんな事言われて。結構へこんだ。
専門学校二年目の俺には夏休みなんて物は無くて、実習と補講。休みはバイト。その繰り返し。
実習にも慣れて、とにかく事故だけ無いように終われればと緊張感は保っていたつもりだった。
けど実習終えて打ち上げやって、家帰って寝て早朝に変な腹痛起こして。救急車自分で呼んで。
何か普通じゃないと思ってたら急性膵炎で。即入院と絶飲食を言い渡されて。呆気にとられた。
空いてる大部屋が無かったから、差額無しで二人部屋に一人。点滴入れながら呆然としてて。
彼女に連絡入れたのは昼頃。いるだろうなと思って俺の部屋に自分で電話して。出てくれて。
入院する事になったと告げると、最初冗談かと思ったらしくて。なかなか信じて貰えなくて。
でも病院名と病棟、部屋番言うと信じて。「準備して行きます。」落ち着いた声で言って。
俺の家からは、自転車で三十分くらいの所。俺の自転車使って来てくれて。
部屋入って左腕に三本点滴入れてる俺見て笑って「あは。似合わない。」思わず、撫でて。
お婆さんの時みたいな動揺は見せなくて。俺も安心できて。しっかりした所も見せてくれて。
着替えとか適当に詰めた袋持って来てくれてて。考えても無かった事で感心して。
よく気がついたね、的な事言ったら「看病、慣れてます。」そう言って、笑って。
どのぐらいの入院になるのかとか、どんな病気なのかとか、彼女の方から聞いてきて。
軽症の急性膵炎で、状況見て退院までが一週間ほど、一週間静養して、検査に問題なければ放免。