婆ちゃんに聞いたと言って。「可愛い子や言うてね。」言われて照れたら、
「でもいかんよ。ええほど遊ぶだけにし。」何の事か解らなくて、黙ってたら、
「親の無いようなのと一緒におったて、出ていく物は全部こっちからになるんやからね。」
「頃合い見て別れんとね。捨て銭いるようやったら、出すけんね。」受話器持ったまま絶句して。
嫁は私が探してるとか、暫く街で遊んだら帰って来て本家継げとか、意味がわからなくて。
「ごめん今日は切るから…。」それだけ言って、とりあえず親父に電話したら、
「やっぱりかよ。」その言葉で予測出来てた事だと知ったて、事情を聞いた。
本家のおばさんは父方の親戚筋で、農家。子供も孫も女の子だけで。跡取りが無くて。
何故か俺に目を付けて、小学校上がる前頃から俺を養子に出せと言い続けてて。
親父は断り続けてたけど専門学校入ったあたりで「いらん事を」と切れだして。
更に彼女の事を聞いて、激怒して。帰ってこないのは彼女の所為だという事になってて。
それ聞いて、俺にはやさしい人だったから、かなりショックだった。
本家の周辺では、葬式の時に跡取りが最前列中央に座って最初に焼香をする言う習慣があった。
今は形だけで、一番若い男子がその役。親戚内に男が産まれなくて、俺はずっとその役で。
でも本家のおばさんだけは決まり事だと言い張り、俺が本家の跡を取るのが筋だと言いだして。
それが行き違いの最初。俺の知らない所で、親父はずっとおばさんと揉めていた。