返答に困ったけど、やっぱりダメとは言えなくて。「いいよ。」って言ってしまって。
「あは。やっぱり、お父さんみたいだったです。」そんな事言って。お互い照れた。
七月の末。彼女とお婆さんの引っ越しを手伝った。
福祉科の担当さんの勧めで市営住宅への入居希望を出してみたら、
生活保護世帯で高齢者と義務教育中の児童の家庭は優先順位が高くて。すぐ決まった。
入居が出来る事になった時、お婆さんは彼女より先に俺に相談を持ちかけて。
市営住宅は家賃が安くて、たしか一万三千円くらいで、あの時住んでたアパートの半分以下。
家賃共益費水道代込みで二万八千円(内訳忘れた)で、水道代払っても、一万円は浮く計算。
「引っ越し、手伝いますよ。」そう言ったら「あの子が何というかよ。」少し迷ってて。
俺と会って仲良くなってからの彼女は、それまでとは全く変わったらしくて。
「当たり前の女の子の顔になってくれてね。」お母さんが言ったのと似た事を言って。
彼女が俺と離れて住んで行き来が無くなったら、元に戻るのではと不安がってて。
時々でも会ってやって欲しいと頼まれて。「会えないと寂しいですから。」素直に言って。
転居先は歩いて二十分くらいの所。その気になれば、すぐ行ける距離。何も問題は無くて。
「あんたがそう言うてくれたら、話がしやすいけんね。」お婆さんも、安心してくれて。
でも伝えてみて引っ越すのは嫌だと言えば、無かった事にすると言って。
彼女が買い物から帰ってきて。お婆さんと話して。そんな長くかからずに俺の部屋に来て。
さてどんな反応するかな、と構えてたら「時々ですか?」それだけ言って、俺の答え待ち。