その空気に異変を感じたのは鈴木だった
どうしようもない違和感
今日って玄関の鍵ちゃんと閉めたっけ?
そんなどことなく不安にさせられる感覚
彼の違和感にあてられ周囲の者もまたざわつく
不安が不信を産み
不信は疑惑を呼び起こす
戦士たちは周囲を見渡し
そして
確信した
微笑んでいる遠山の姿と
にやりと口端を上げる長谷川の姿を見たとき
敗北を、確信してしまった
ばかめ
協力をしていたのが自分たちだけだと思ったか?
遠山君は優しい生徒だ
妹持ちの4人家族
少し貧血ぎみだがごく普通の少年
頼まれたら断らない性格の優しい少年だ
だからこそ
僕は彼に布石を打った
遠山君には事前に話を通していたというだけだ
もしも今日保健室で休んだならば
プリンを僕にゆずってくれと
ただそれだけの話
ただそれだけの事
みたか童どもよ
これこそが戦略だ
見返りとして彼には好きなカードゲームのレアカードを渡しておいた
仕組まれた戦
必然的な戦果
仮に僕があのまま勝っていた所で
僕はそのままプリンを頂くだけ
そう、それだけだ
初めから貴様らに勝利などなかったのだ
手の上でもがく昆虫が如く
蜘蛛の巣であがく蝶が如く
お前らは最初から僕達に遊ばれていたという事さ
全てを理解した強者達は
今度こそ堕ちた
二度と這い上がれぬ敗者の沼へ
彼らはうめき声をあげ
絶望に顔をゆがませる
敗者どもの青ざめた顔と
負け犬どもの悲鳴を背に
僕は悠々と歩きだす
そしてプリンにキスをして
そっとつぶやく
今宵の獲物もまたうまそうだ、と
女子「……」
女子「男子ってほんと馬鹿」
【終わり】
出典:http://blog.livedoor.jp/goldennews/archives/51947592.html