その年も案の定忘れてて遊びに出かけ、
確か夜10時過ぎくらいに帰ってきたと思う
玄関のドアを開けたら、家の中真っ暗。
オフクロはもう寝たのか、と思った矢先
「おかえりなさい。電気点けちゃ駄目よ」
と、台所のほうからオフクロの声が
なんでこんな真っ暗にしてんだよと言いつつ台所に向かうと、
水道からドバドバと水が流れて器に溜まる音がする
暗くて薄ぼんやりとしか見えないが、
どうやらオフクロは水道の前に立って
水を両手で受けているようだった
何してるのかと聞く前に、オフクロはすっと横に避けて、
俺を水道の前に立つよう促した
「両手で水を汲んで。こぼさないようにしっかりとね」
とりあえず手洗いするつもりで水に手を突っ込むと
「そのまますくって。お家の中のどこかにいるから、探してちゃんと飲ませてあげてきなさい」
と、わけのわからないことを言う
正直頭の中???状態だったが、
穏やかな声なのに有無を言わせない迫力があって、
何故か逆らえなかった
探すって何を?と思いつつ、
とりあえず両手で水を汲んで、暗い中をそろそろと歩き出した