それから
それからよく3人で話すようになったんだ。
話してみると変人もたくも面白い人で、話していて飽きなかった。
変人は家から学校まで3時間かかるらしくて、
いつも朝起きるのが大変、
だけど学校は楽しいよ、
と言っていた。
一度だけ気になって変人に
なんでそんな遠いところからこの学校に?
と聞いたことがあったけど、
「知り合いがいないところが良かったから」と苦笑いしながら答えてくれた。
たくはサバゲーが大好きで、
他クラスにサバゲー知り合いがいると言っていた。
でも他クラスで友達が出来たらしく、
最近は疎遠になっているとも言っていた。
俺とたくに共通の話題がなかったんだけど、
変人は俺とたくが話せるように、
色々な話をしてくれた。
最近はこのゲームが面白い、
新しく発売した本がおすすめ、
コンビニに美味しいお菓子がある、
などなど話題は尽きなかった。
独特の話し方で気づいたら休み時間が終わっているほど、
話していて楽しいやつだった。
たくも同じ気持ちだったと思う。
変人はたまに変な行動をしていて、
急に頭を抱えて机に突っ伏したり頭を掻き毟っていた。
独り言も多くてたまにブツブツ呟いていたり
怒っているのか泣いているのか分からないような表情をしたこともあった。
たくに事情を聞いても分からないらしく「心配だね」と言っていた。
部活の仮入部期間が始まり、
どこに行こうかと話していると
「イラスト研究部に行くけど、どうする?一緒に行く?」
と変人が聞いてきて、一緒に行くことになった。
インドア派な俺とたくと変人3人でイラスト研究部に向かった。
部室のドアには髪が貼られていて、
『イラスト研究部』その下に小さく『部員募集』と書かれていた。
ドアを開けると案外広く、縦長な部室がそこにあった。
棚には絵を描くのに必要な物がたくさん並んでいた。
変人は奥の椅子に座り、デッサン用の腕?
と握手しながらニコニコして「この腕、可愛い」と言っていた。
担当の先生(顧問)に聞いたところ、
部員は去年の卒業生が全員で今は0人。
もし入るなら部長の座だって空いてるよと言われた。
他にも数人仮入部に来ていた他の女子がいて、
少し挨拶をしたあと、それぞれ絵を描いたりしていた。
俺はなんとな自分のペンを持った手を描いてみたけど、
なかなかうまく描けなくて、たくの絵を見ていた。
たくの絵は大雑把だけど、
上手だった。
負けてられないなと思い、
俺も手の続きを描いた。