「あたしたちは普通なの。特別でも何でも無い、もうほんとに普通。『何者か』ではないの。
Aはたまたまタイミングを外したから無事なだけ。つか、連れて帰ってきたら家いれないよ。
洋画に出てくる様な、陽気な黒人ポジションには立てないのよ。絶対すぐしんじゃう」
妙に説得力があった。
で、今に至る。
結局SがA母にチクったため計画は駄目になったが、Aはホッとしてる様に見えた。
その日、O神社に3人でいった。
あのおっさん以外で、協力的な人間が居ないものかと考えたのだ。
「私はここに来てまだ日が浅いから、その病院は知らない。でも何というか、この辺り一帯が気持悪いね。
この団地中になんか変なとこいっぱい無い?」
その日おっさんは居らず、何だか気さくなねーちゃんが話をきいてくれた。
言われたとおり、変な箇所はいくつか思いついたし、そう言えば自殺もかなり多い。
「こうやって神社にいるけど、マニュアル通り対処出来る事なんてまぁ稀なんだよ。
イレギュラーばっか。だからあんまり危ない事されてもねぇ」
O神社を出て、小学校の前を歩いていた。
もう真っ暗で、何気なく小学校を眺めると、警備員の人が窓際を歩いている。
窓の連続が途切れる、丁度消火栓が壁に埋め込まれているゾーンに彼が差し掛かった。
反対側からは誰も出てこなかった。
「いま見えたでしょ?案外怖くないもんだよね、何もしてこないし」Sが俺に微笑む。
今日、俺は初めてユウレイを見た。
SとAには、その後沢山不思議な話を聞いて別れましたとさ。
——以下、Sの弟の話——