電話しながら病院の前までつくと、流石に昼時だけあって雰囲気はだいぶ優しかった。
「今から病院に入るけど、大丈夫かな?」
「わかんない。大丈夫じゃない?ほんっとに1人も居無いよ」
これはフリか?Sの言葉に不安になりながら、Aは入って行った。
話を聞いただけで実際に入るのは初めてだったから、
入り口から入ってすぐに左に曲がって廊下を進んでしまう。
俺たちが登った階段は真ん中で折り返してたから、構造的にAが進んだ廊下はあの時の廊下の真下になる。
「ん、二階かな?」
Aが「昼でもやっぱ霊とかいるの?」と聞くと、
「時間帯は関係ないよ。タイミングが大事。わかる?」
別に会いに来たわけじゃ無いが、意を決してAは二階に上がった。
「…思ってたよりずっと怖いわ」だれに言うでもなく声をだした。
あの先になにがあるんだろう。2人は何に苦しんだのだろう。
Aは廊下の先を睨みつけながら歩いて行った。
「今んとこなにもいないよ。もうやめたら?」
もう一歩踏み出して、体を右に向ければ部屋が見えるところまでついた。