恐くなった俺は、立てかけてあったビニール傘の先で、
その手を思いっきり何度も突き刺した。
リアルな肉の感触が傘を伝わってくるのを感じながら、
それでも思いっきりかさを突き刺していると、
その手はふっと引っ込んで、それっきり静かになった。
玄関の外には人の気配はなく、覗き穴を見ても人らしき影はない。
うわー、出たー!と思いながら、
その日は布団を被って震えながら眠りに付いた。
夕方頃に目を覚ました俺が、バイトに行くため恐る恐る玄関に近付くと、
玄関に無数に小さな丸い跡が付いていた。
それは昨日、俺が何度も青白い手に突き刺したはずの傘の先の跡だった。
俺は確かに手だけに刺していたはずだった。
一度も金属音はしなかったし、そんな感触もなかった。
(大家さんにはメチャクチャ怒られたけど・・・。おまけに弁償した)
だが、おかしなことはそれだけではなかった。
外にはくっきりと、玄関の方を向いて立っていたであろう足跡が付いていた。
それも泥まみれの!
その日も前の日も雨なんか降っていなかったし、
階段には足跡どころか泥さえも付いていなかった。