ようやくウトウトし始めたころ、充電器にセットされた携帯のバイブ音が部屋に
鳴り響いた。ベッドから飛び起きて携帯をチェックすると、メールは彼女からだった。
「やばい、終電寝過ごして終点まで来ちゃった。帰れない。」
もう10月。外で朝まで時間をつぶせる季節じゃない。俺はまわりにビジネスホテルか
マンガ喫茶でもないかと彼女に尋ねたが、どうも泥酔しているようでまともな返事が
帰ってこない。
『駅名を聞いて迎えにいったほうがいいんじゃないか?』
そんな考えが頭をよぎった。もし彼女がOKしてくれれば、ようやく恋焦がれた彼女に
会うことが出来る。しかしそれは明らかにルール違反だ。しかし彼女が今連絡を
とってきてるのは俺だ。
彼女が頼ってきているんだし、この場合ルール違反も仕方がないんじゃないか?
でもなんで彼女は俺にこんなことを言ってきてるのだろう。直接の知り合いに言った方が
彼女には都合がいいじゃないか。泥酔してそんなことも分からなくなっているのだろうか。
色んな考えが頭の中を駆け巡る。
「大丈夫?意識まだしっかりしてる?自分が今いる駅の名前ちゃんとわかる?」
彼女に警戒されないよう、迎えに行くとは言わずに駅名だけでも聞き出そうと試みた。
すぐにまた震えだす携帯。しかし画面を見るとメールの着信ではなく、番号非通知の
電話の着信だった。
電話をとると、やはり相手は彼女だった。ろれつが回っておらず、かなり酔っていることが
すぐにでもわかる。何故俺の携帯の番号を知っているのか不思議だったが、そんなことを
聞きだせる状態ではなかった。
ひどい酔い方で質問をしてもまともな返事が返ってこない。携帯から酒の匂いが伝わって
きそうな勢いだ。