それとも彼女は俺とのメールが苦痛だったのだろうか?
実は俺はそれを一番恐れていた。俺が喜んでメールをしていたあの期間、
彼女は本当はお金の為に、嫌々メールをしていたのだとしたらどうしようかと。
でもきっとそれは違うと信じていた。だってメールをするのも嫌な相手に
普通キスなんてしないだろ?
ただ理由が知りたい。その一心で俺は店へと足を運んだ。緊張しながら店内に
入る。ぐるっと店の中を一周し、彼女の姿を探す。しかしそう簡単には事は
運ばない。店の中に彼女の姿はなかった。
俺は店の入り口のレジカウンターへと向かった。すみませんと声を掛けると
店長らしき人が応対してきた。
「あの、ワカバヤシさんは今日はいらっしゃいませんか?」
銀行口座の名義人名が本人の名前だと確認していたので、俺はその名前で
尋ねてみた。
「ワカバヤシなら先週で店を辞めたよ。」
二日連続のKOパンチ。またも視界はグラグラし始めた。
動揺をなんとか表に出さないよう努力しつつ、それでも食い下がる俺。
「あの、私ワカバヤシさんの友人なんですけど、連絡先を教えていただけないでしょうか?」
こんな勇気を出すのは生まれて始めてかも知れない。ただ返事は当然のことながら
「そういった事は教えられない」と言うものだった。個人情報の保護が叫ばれる昨今、
店長の対応は正しいと思う。それは分かっているけどあえて言わせてもらう。ケチ!
「わかりました。無理を言ってすみません。」