そして自分の嬉しさの表現と、写真の俺をかねて、俺は翌日3万円を振り込んだ。
こうしてメールを媒介とした俺と美紀の擬似恋愛生活は2ヶ月目を向けた。
実際に会ったことがないことと、彼女の素性が分かるようなことには触れてはいけない。
この2点を除けば、俺と彼女のやりとりは本当の恋人同士と何も変わらなかった。
まさかお金を払ってる相手と喧嘩まですることになるなんて。
ちょっとこのオプションはリアリティを追求しすぎだと思わない?
彼女から怒りのメールが届いたのは、お金を振り込んだ翌日の昼だった。
「なんか3万円振り込まれてるけど何で?」
俺は顔写真を送ってくれたお礼だと言ったが、それが彼女を怒らせたらしい。
写真を送ってくれたのは俺を喜ばそうとした彼女なりの善意であって、それに
対してお金を払われたことが彼女には不愉快だったのだ。
俺は彼女がこの契約関係をやめると言い出すのではないかとハラハラした。
恋人に別れ話を切り出されるのではないかと心配するかのように。
こんなサービスいりませんから。
俺の謝罪メールに対して、彼女は返事をくれなくなり、ハラハラしながら
その日は仕事を終え、家路についた。帰りの電車の中と、家についてからと
俺は謝罪のメールを出し続け、彼女からのメールを待ち続けた。
その日、0時を過ぎた頃、ようやく彼女から返事が来た。