女「……悪いですか?」
男「いえ、ぜんぜん」
男「それにしても。あなたが叫んだ瞬間に、おばさんが来たんで焦りましたよ」
女「管理人さんです」
男「思わず隠れてしまいましたよ」
女「隠れたんですか?」
男「おや? 気づきませんでした?」
女「管理人さんのほうに気をとられてましたからね」
男「靴のことを指摘されて焦ってましたね」
女「……うるさいです。それより、どうやって隠れたんですか?」
男「ん?」
女「ここ、とっさに身を隠せる場所なんてありませんよ」
男「あなたなら、塀の上から見慣れてると思うんですけど」
女「わたしなら……あっ、そっか」
男「気づきましたか?」
女「屋上の塀のでっぱりに、とっさに隠れたんですね」
男「正解です。小さな塀とは言え、よくとっさに隠れられたと思います」
女「……」
男「って、どこへ行くんですか?」
女「屋上から出ます」
男「あれれ? なんで?」
女「管理人さんに言われたからです」
男「屋上から出て、どうするんですか?」
女「いったん部屋に戻ります」
男「え? タヒなないんですか?」
女「…………」
男「なるほど。そういうことですか」
女「なんでそんなにニヤニヤしてるんですか?」
男「これからあなたの部屋に行って、僕とあなたで……」
女「ちがいますっ!」
男「ちがうんですか?」
女「そもそもどうしてあなたを部屋にあげるんですか」
男「……野外プレイがお好みということですね」
女「自禾殳する前に、あなたを殺したほうがいいかもしれませんね」
男「犯罪者になると?」
女「どうせ結末は同じですから」
男「だったら僕に抱かれてしまえばいいじゃないですか」
女「もうその話は飽きました」
男「エレベーターに乗りましたけど、あなたの部屋ってなん階なんですか?」
女「教えません」
男「どうせこれから知りますよ」
女「今ここはなん階でしょうか?」
男「一階ですね。一階なんですか、あなたの部屋は」
女「いいえ。これから外に出ます」
管理人「おや。どこかへおでかけですか?」
女「ええ、ちょっと早めの夜ご飯を食べに」
管理人「そうですか。物騒な世の中ですから、夜道には気をつけてください」
女「ええ。実感しているまっただ中なんで、気をつけます」
男「ちょっとちょっと、マンションの外に出てるじゃないですか」
女「やっぱり部屋にはもどりません」
男「どうして!?」