女「……勝手にどうぞ」
男「気持ちひとつで、なにもかも変わるってことを認めたくない。
そういうことじゃないですか?」
女「……」
男「これから自禾殳するって人間としては、そういうのって知りたくないですよね」
男「気持ちひとつで昨日まで輝くかもとか思うと」
男「タヒのうとしていた意志までゆらいじゃいますもんね」
女「わたしがタヒぬのは決定事項です。今さら変わりません」
男「いいえ。だったら喜んであなたは、最後の晩餐を楽しめると思いますよ」
男「たかが百円のハンバーガーで、自分の意志が消える」
男「それがコワイんじゃないですか?」
女「これはビッグマックなんで、百円じゃありません」
男「ここぞってところでボケないでください」
女「むぅ」
男「ついでに、僕に抱かれてもいいと思っている自分がいる。そうですね?」
女「いえ、それだけはタヒんでも変えるつもりはありません」
女「人間のバグっていうのは、なかなか人間に都合よくできてるみたいですね」
女「でも、世の中には変わらないこともあります」
女「わたしの気持ちは動きません」
男「あなた、さてはすごいガンコですね」
女「そうです。石のようにかたい意志をもってるんです」
男「あと、ギャグセンスないですよね」
女「……べつに、あなたを笑わせたいわけじゃないんで」
女「ていうか、さっきから変な会話をさせないでください」
男「変な会話?」
女「ええ。さっきから妙に視線を感じるんです」
男「これからタヒぬのに、赤の他人の視線が気になるんですか?」
女「う、うるさいです。とりあえずさっさとここを出ます」
男「最期の食事なのに、そんな食べ方しなくても」
女「……」
男「急にがっついたと思ったら、今度は食べるのをやめて……ブレブレですよ」
女「ちょっと黙ってください」
男「結局すごい時間をかけて食べましたね」
女「最期の食事ですから。当然でしょう。なにか文句でも?」
男「いえいえ。そんなことよりも、これからのことについて話しましょう」
女「あなたと話すことはありません。ていうか、いつまでついてくる気ですか?」
男「僕の善意を無下にする気ですか?」
女「善意?」
男「あなたがタヒぬ前に、僕がベッドの上で天国へ導いてあげようとしてるのに」
女「わたしが地獄へ送ってあげてもいいんですけどね」
男「あははは、それは無理ですよお」
女「たしかに、そんな気がします」
女「……ていうか、あなたってすごい変わってますよね」
男「僕の求愛行動がですか?」
女「ちょっとその話題からはなれましょうか」
男「なにがいったい変わってるんですか?」
女「全部が全部変ですけど、普通の人って自禾殳する人に対してその理由を聞きますよね?」
男「なんですか、ひょっとして自禾殳する理由を聞いてほしいんですか?」