その頃私子は知らなかったが、私子と別れた直後から彼男は可愛子のストーカーと化していたようだった。
決してアプローチはしない。基本待ち姿勢。
でもいつでも可愛子ちゃんが俺の胸に飛び込んでいられるように、近くで待機。
電車の中や帰り道もすぐ近くで待機。
夜道はけしからん男が可愛子ちゃんに悪さをしないように、ボディガードも兼ねて少し離れた後ろに待機。
むろん彼女には何も言わずに。影から可愛子ちゃんを見守るナイトとなっていた。
このあたりの事情はずいぶん後で友子から聞いた。
当時の可愛子は恐怖を感じて友子に相談。
昼間、人目のある駅構内で彼男と対決したらしい。
すると彼男は、自分は可愛子ちゃんを守っているだけ、彼女の気持ちを尊重して何も言わないでいる。
可愛子ちゃんがそんなに俺を気にしていたんだったら、迷わず胸に飛び込んできたら良かったのに。
という激しく頭が痛くなるような回答だったようだ。
ともかく付きまとうなと友子が宣言すると、彼男は「これもそれも全部私子が悪い」と言いだしたそうだ。
私子が冷たいから、私子が最低女だから、私子が理不尽だからこうなった、と。