それから、数週間が経過した。
ひまわりと風間くんは、清い交際を続けているようだ。
それは兄としては微笑ましいことではあるが、極度のお母さんっ子である風間くんが、ひまわりとお母さんの板挟みにならないかが少しだけ不安だったりする。
しかしまあ、ひまわりのことだ。持ち前のど根性スキルと負けん気で、難なく色々やってみせるだろう。
今日のごはんはハンバーグにしようと思う。
我が家のハンバーグは、中にチーズを入れる。ハンバーグを開けた時に、トロッと出てくるチーズは、ひまわりが絶叫する程美味なのだ。
「……ん?」
買い物の帰り道、ふと曲がり角にいる不審な人物を発見した。
周りを気にしながら、曲がり角の先をチラチラと覗いているではないか。完璧に、誰が何と言おうと不審者だ。
オラが携帯を手に持ち、ダイヤル110番を押下しようとした直前、その人物に見覚えがあることに気付いた。
(あれは……)
ゆるりと近付き、声をかけてみる。
「――まさおくん?」
「――ィヒイイィイイッ!?」
あれだけ周りを気にしていたのに、背後に近付くオラに全く気付かなかったのだろうか。
付近に響き渡るほど、まさおくんは絶叫した。
振り向いたまさおくんは、オラの顔を見て胸を撫で下ろす。
「……なんだ、しんちゃんか……もう、脅かさないでよ……」
「いやいや、驚いたのはこっちの方だぞ。ていうか、何してるの?」
その問いに、まさおくんは少しだけ躊躇した。そして、曲がり角の先を顎で示す。
「……あれだよ」
「あれ?」
まさおくんに指示されるがまま、オラはその方向を注視した。
「……あれは……ねねちゃん?」
その先にいたのは、ねねちゃんだった。そして彼女の隣には、見覚えのないイケメンが。
二人は、談笑しながら歩いていた。
「……まさおくん。これって……」
「………」
まさおくんの顔は、この世の終わりのように沈んでいた。