それからオラ達は、3人で街を周っていた。
最初風間くんとひまわりは、オラに気を使いながら歩いていた。
それもそうだろう。先日あんなことがあったばかりだし。
……でも、オラはあえて普段と変わらず二人と接した。
本音を言えば、オラも気まずいことこの上なかった。でも、オラまで気を使ってしまったら、今日ここに二人を並べた意味がない。
オラは、積極的に二人に話しかけた。
「風間くん、この服似合いそうだね」
「あ、ありがと……」
「ひまわり、あっちにアイスがあるから食べようよ」
「う、うん……」
二人は、腑に落ちないような顔をしながら、街を周る。
それでも、時間が経つにつれ、徐々に緊張は途切れていった。
そして最後には、二人は、普段の通りの笑顔を見せながら歩いていた。
頃合いを見計らい、少しだけ二人と距離を置く。
「――風間くん!これ見て!」
「ああ!これ可愛いね!」
「でしょでしょ!?」
「うん!ひまちゃんに似合いそうだ!」
……二人は、とても楽しそうだった。そして、幸せそうだった。
特にひまわりは、普段家では見せないような笑顔を見せる。家族に見せるものとは違う、全く別の笑顔……
この笑顔を作れるのは、きっと風間くんがいるからだろう。
おかげで、ようやく心が晴れた気がした。
「――ひまわり、風間くん、オラちょっと、これから仕事があるんだ」
「え?お兄ちゃん、今日は休みなんじゃ……」
「……さっき電話があったんだよ」
「じゃあ、帰ろうかしんのすけ」
「いやいいよ。オラだけ帰るから、二人で楽しんでよ」
オラは、二人の元から離れはじめた。
「ちょっと!お兄ちゃん!」
ひまわりの言葉に手だけを振って答える。
そして一度振り返り、風間くんの顔を見た。
「……風間くん。ひまわりを、頼んだよ」
「……しんのすけ……」
風間くんは、オラの目を見つめ返していた。その目は、オラに何かを訴えていたように見えた。
そんな彼に微笑みを返した後、オラはそのまま、その場を離れていった。
帰り道に、ふと足を止め空を見上げた。そして二人の姿を想像してみる。
きっと今頃は、二人で街を歩いているだろう。風間くんが車椅子を押して、ひまわりが笑って……
その姿は、オラの心を温かくする。でも少しだけ、寂しさも生まれていた。
「……さて!帰ってご飯の準備でもするかな!」
そんな入り混じる想いを胸に、オラはもう一度歩き出した。
今日は、ひまわりの大好物を作って、帰りを待っていようと思う。