【クレヨンしんちゃん】しんのすけ「……父ちゃん、母ちゃん。ひまわりは今日も元気です。――行ってきます」誰も知らない22年後・・・

そこに書いてある文字を、オラは4度見ほどしてみた。しかし、何度見ても同じことが書いてあった。

『祝!酢乙女あい、婚約!』

「……あいちゃん、結婚するんだ……」

「はい」

「へえ~。……誰と?」

「それはもちろん、しんのすけさんとです」

「……ああ、なるほど。やっぱりそうか……」

それは予想していた通りの返答であった。何しろ、しっかりと書いてある。

――『お相手は、酢乙女グループ特別顧問、野原しんのすけ』と……

「ああ、なるほど。オラがあいちゃんと婚約ね。
オラが…あいちゃんと…………って、ええええええええええええええええええ!!??」

朝一の事務室では、オラの叫び声が響いていた。

「ちょっとあいちゃん!これ、どういうこと!?」

オラはあいちゃんに詰め寄る。

「どうもこうも、そういうことです」

あいちゃんは、相変わらずにっこりと笑っていた。

「いやいや…いやいやいやいや!なんで急にこんなことになってるの!?」

「……実はですね、私の父が、しんのすけさんのことを大変気に入っていまして……」

「……それで?」

「好きかと聞かれて、大好きですと答えまして……」

「……それで?」

「結婚することになりました」

「いやおかしいから!!色々飛び過ぎだって!!」

「あら。ちゃんとご家族にも確認を取りましたよ?」

「か、確認?」

「はい。ひまわりさんに。しんのすけさんと結婚したいと言ったところ、『あんな兄で良ければ、じゃんじゃん結婚してやってください』って言われましたし」

「それ、家族だけど、オラへの確認は!?」

「そんなもの必要ありません。私としんのすけさんが結婚することは、すでに決定事項ですし」

「えええ……」

「……あら、もうこんな時間。すみませんが、会議に出席してきます」

あいちゃんは、愕然とするオラを置いて、部屋の出入り口に向かって行った。

「ちょ、ちょっとあいちゃん!まだ話は―――」

「――しんのすけさん。一つ、言っておきますね」

部屋の入り口を開けたところで、オラの方を振り返る。
そして、不敵な笑みを浮かべた。

「――私も父も、かなり“しつこい”ですから。あしからず……」

そう言い残したあいちゃんは、部屋を出ていった。

残されたオラは、ただ愕然とするしかなかった。

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