【クレヨンしんちゃん】しんのすけ「……父ちゃん、母ちゃん。ひまわりは今日も元気です。――行ってきます」誰も知らない22年後・・・

「――あれ?」

仕事を出る前のひまわりが、オラの様子を見て疑問符を投げかける。

「お兄ちゃん、今日はかなりゆっくりだね。まだスーツじゃないなんて……」

「え?あ、ああ……すぐ着替えるよ。――それより、急がないとまた遅刻するぞ?」

「――あ!うん!」

ひまわりは食パンを片手に、玄関を飛び出していった。
彼女を見送った後で、オラは仏壇の前に座る。

「……父ちゃん、母ちゃん。オラ、会社辞めちゃったよ。小さい頃、父ちゃんにリストラリストラって冗談で言ってたけど、実際そうなると笑えないね」

仏壇に向け、苦笑いが零れた。

「……でも、今日からでも仕事を探してみるよ。……分かってる。ひまわりには気付かれないようにするから。あいつ、ああ見えて心配性だし……」

そして立ち上がり、いつもよりもゆっくりとスーツを着る。
とにかく、片っ端から面接を受けるしかない。そのどれかが当たれば、それに越したことはない。

大丈夫。きっと、大丈夫だ……

オラは、自分にそう言い聞かせながら、家を出た。

午前中から、色んな企業を周った。
求人案内が出てるところをはじめ、とにかく、直談判した。会社、工場……場所を問わず、とにかく足を運んだ。

……だが、現実は甘くない。
そもそも春先でもない今の時期に、求人があること自体が稀であった。そしてどこも、簡単にはいかない。
どこも同じなんだろう。余裕がないのだ。それに、オラも27歳。うまくいくことの方が、難しかった。

(やっぱり、どこも難しいな。でも、まだ始めたばかりだ……)

そして、オラは街を歩く。仕事を求めるため、乾いた風が吹くビルの隙間を、縫うように歩いて行った。

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