診察室に入るみさえを
しんのすけとひろしはただ見送った。
検査は一時間ほどかかるらしい。
ひろしはもちろん、
ひょっとしたらしんのすけにとっても
この一時間はとてつもなく長いものだったかもしれない。
「野原さん、診察室へお入りください。」
アナウンスと共に
2人は部屋に飛び込んだ。
みさえは別の部屋で休んでるらしく、いない。
医師「どうぞ、お座りください。」
ひろし「み、みさえは!あ、赤ちゃんは!大丈夫なんですか!!」
しんのすけ「かあちゃんは食べ過ぎなだけだよね!?」
医師「落ちついてください。今ご説明します。」
医師「…奥さんは、癌です。」
ひろし「……が、がん?」
しんのすけ「がぁ~ん」
しんのすけ「…ってなに?」
医師「正確には胃癌です。まだ初期段階なので命に別状はないのですが…ちょっと問題がありまして。」
ひろし「と、いうと」
医師「はい、奥さんは今妊娠されていますね。」
ひろし「え、えぇ。」
医師「初期段階の胃癌でしたら、手術することなく抗がん剤で治療することができます。」
医師「しかし、今抗がん剤を使用すれば母体だけでなく、お腹の中の赤ちゃんにまで負担を与えてしまいます。」
医師「この場合、ギリギリまで赤ちゃんの成長を待って、出産と治療を手術で同時に行うことになります。」
ひろし「な、ならみさえと赤ちゃんは助かるんですか!」
医師「……………」
ひろし「先生!!」
医師「正直、五分五分です。赤ちゃんが成長しきるまで、奥さんの体力が保つかどうか。保ったとして、手術に耐えられるかどうか…」
ひろし「そんな…」
この日から
みさえは入院することになった。
ストレスからくる体力の衰えを避けるべく
癌のことは言わないことにした。