特急乗って一時間半くらい。少し待って乗り換えて、汽車で四十五分くらい。
窓の外の景色がだんだん山奥になっていって。山と川と崖ばかりの風景になって。
お母さんの納骨の時は、車の外なんか殆ど見えて無くて、こんな所だったんだって驚いて。
景色は確かに綺麗なんだけど、線路沿いの民家がかなりまばらで。何か寂しげで。
降りた駅も無人だったし、駅すぐ横のバス停、日に三つとか四つしか時刻書いて無くて。
人通りとか全く無くて。これは確かに、一人で来るのはちょっと不安かなと思った。
道は彼女が覚えていて、まっすぐお寺まで行って。お墓の前立つと、妙に緊張して。
作法とか知らなくて。見よう見まねでお墓洗って。水取りかえて。少し、手合わせて。
彼女がそのまま動かないのを、半歩くらい後ろで待ってて。振り返った彼女は、笑ってて。
「帰る。」「もういいの?」「泣くかも。」「いいよ。」「禁止だもん。」
言い終わるより早く、歩き出してて。何度か振り返って、お寺出て。駅戻った。
帰りの汽車まで一時間半待ちくらいで。屋根はあっても直射日光浴びまくりで。
時間潰すのと、暑さをちょっとでも避けるために、涼しいとこ探して散歩する事になって。
木が茂ってる林道みたいな所でベンチ見つけて座ると、彼女が突然、話し出した。
ここがお婆さんの里で、お母さんが育った所でもあると言う事。
彼女のお爺さんも若い頃に亡くなっていて、お婆さんが女手一つで育てたと言う事。
お父さんとお母さんはご近所さんで、二十一歳と十七歳で結婚したと言う事。
お母さんが二十歳の時に、彼女が生まれて、名前はお父さんが決めたと言う事。
彼女も、小さい頃はこの町に住んでいたと言う事。勿論全然覚えてないと言う事。
お父さんは、林業と運送をしてたと言う事。二十七歳の時、事故で亡くなったと言う事。
車両や道具の借金(ローン?)が払えなくなって、自己破産して三人でこの町を出たと言う事。
お父さんが亡くなると、お父さんの家とは縁が切れてしまったとしまったと言う事。
お母さんが元気な頃は、期間工として精密機械とかの工場で働いていたと言う事。