「あは。ホントだったんですけどね。」木漏れ日に照らされた笑顔が、眩しくて。
「優しくして貰って、始めて嬉しかったし。」「…始めて?」
「みんな、お母さんのついでだったから。」またちょっと顔曇らせて。
お母さんは綺麗な人だったから、下心持って近付く男性もいたみたいで。
家の状況知ると、親切めかして経済的な援助を持ちかけたり、お金でつろうとしたり。
彼女に対しても何か買ってくれたり食べさせてくれたりって事もあったけど、
お母さんが交際を断るとぷっつり来なくなったり、怒ったり。仕事首になったりもして。
そんな事が何回かあると、彼女も幼いながらに嫌悪感みたいなものを感じて。
小学校の時の優しい先生も、お母さん前にして話す時といつもとは違ってて。
その何か変な感覚が、凄く嫌で。男の人ってみんなそうなのかなと、思ったらしくて。
男性に優しくされたり、親切にされたりって事自体を警戒するようになった。
でも何故か俺には、その警戒感を感じなかったらしくて。あれ?って感じで普通に話せて。
お母さんに対しても彼女に対しても、普通。この人は大丈夫。そう思ったらしくて。
そこまで話して、彼女は俺見上げて。少し顔緩めたかと思ったら、くいくい手引いて。
「ねぇ。お兄ちゃんがやさしいのって、何でですか?」突然そんな事言い出して。
「何で?」「ん?」「何で優しいんですか?」「んー?」「なんで?」「んー…?」
だんだん、声に甘えが含まれてきてて。「なんで、ですか?」上目遣いで。揺さぶられて。
あれこれ考えるのも面倒だし、思い浮かばないし。だったらもういいやって感じで。
「好きだから。」「…あは。」「これでいい?」返事せずに、腕に掴まって。
結局言わされたというか。誘導されたというか。またか、って感じではあったけど、
重い話の後だったから、それがなんとなく和らいで、助かった。