「何か飲む?」殆ど一時間話詰めの彼女気遣って言ったら、頷いて。
駅帰る道で自販機探して。駅前でやっと見つけて。小銭入れて、彼女がお茶のボタン押して。
「半分ください。」って俺に渡して。何気なく半分飲んで、返して。
彼女、くーっと全部飲み干してから「あは。関節キス。」とか言い出して。自分で照れて。
「ごめん。」つい言って。「大丈夫です。」顔ほてらせて。はにかんで。何故か肩叩かれて。
「大丈夫ですから。」念押されて。うつむいて顔上げなくなって。思わず、撫でた。
帰りの汽車に乗って。やたらくっついてくる彼女がいて。周囲に目が気になって。
来る時と同じく、やっぱり目閉じて眠ろうとしてるんだけど、完全に甘える態勢で。
周りに人いるのに、部屋にいる時と同じ位置。左斜め下。距離ゼロ。密着。
時々肩に頭とか額当てて。見上げて。また目閉じて。ずっとそんな感じで。
髪の匂いがやたら気になって。彼女に対しても、周囲に対しても、平静を装うのに苦労して。
それでも、彼女が酔いもせず、どこか心地よさそうにしてるのをみてると、安心して。
今なら聞けるかなと思って「誕生日、何か欲しい?」彼女は目開けて、見上げて。少し考えて。
俺がしてた腕時計、触って。「これ。」その時してたのは、黒のGショックで。
高校の時に凝ってた迷彩柄に合わせて買った、ごつくて無骨な、大きいやつ。
どう見ても彼女には不釣り合いだと思ったけど、欲しいならって感じで。
「探すよ。」彼女、首振って。「これがいい。」してるそれを欲しがって。
とりあえず外して、彼女の腕に巻いてみて。一番細いとこまで絞って、やっとくらいで。
左腕に俺のだった時計。やっぱりアンバランスな程大きくて。でも嬉しそうで。
「いいの?」「うん。」「中古だよ?」「お兄ちゃん、いつもしてたから。」
あんまり答えになってなかったけど、とりあえず喜んでるから、よし。そう思う事にした。