「布団持ってくる?」聞いたら「ここ。」って、座ってたベッド、ひとつたたいて。
その時はまだ、そこまで甘えるか?と言う感覚。その時はまだ、完全に子守りだなって感じで。
「狭いよ。」「…あは。平気。」問題無い言う感じで。断る理由が無くて、まあいいいかと。
彼女が全部消すの怖がって、豆球点けた状態でベッド入って。お互いの表情くらいは伺える暗さ。
殆ど真横に彼女の顔があって。部屋で座ってる時なら当たり前の距離なのに、妙に意識して。
胸の上に乗っけた手でシャツ掴まれて、更に身体寄せられて、くっつかれて。
体の右半分に、彼女の身体の感触感じて。…意外と、女の子なんだな。そんな事考えて。
だんだん体温感じて。ちょっと変に意識して。打ち消して。少し離れようとしたら、手に力入って。
「…やだ。怖い。」短く小さく、でもハッキリ言って。驚いて。
「怖いって?」聞いても、答えはなくて。また手に力入って。微動だにも出来なくなって。
寝れるかな、これ。色々考えてるうちに寝息聞こえて。助かったと思った。
でもかなり心拍数が上がって。寝られる状態になるまで、時間かかった。
何とか寝られて、朝は彼女に起こして貰って。送り出す前に、合い鍵渡した。
特に理由は無くて。お婆さんいないなら、こっち来てればって感じで、他意もなく。
それが彼女には嬉しかったみたいで。凄く大事そうにカギしまい込んだのを覚えている。
彼女は学校で、俺はバイトで。どっちも終わってから行くと、面会時間が過ぎる。
俺は中抜け出来たので、様子を見に行った。お婆さんは食後で。談話室でテレビ見てて。
いろんな検査があって退屈はしないけど、消毒と薬の臭いで鼻が変、みたいな事言って。
「一緒に寝て、言われた?」小声で、いきなり聞かれて、動揺隠せなくて。
「言われました。」正直に言って。「すいません。」つい謝って。笑われて。
「こっちがすいませんよ。あれ、恐がりのあまったれやから。」そうなると思ってたみたいで。
「あんたみたいな人、おってくれてよかった。」お婆さんはそれまでと同じ軽い調子で、
「私がどがいかなっても、あの子ぱっとほたったりせんやろうし。」方言混じりで言って。
ほたる、と言う表現。俺らの地方では、放っておくと言う意味で使うのが普通。
でも、捨ててしまうと言う意味に使う事もあって。前後の感じからして、後者の感じがして。
「しないですよ。」反射的に言って。「ありがとうね。」急にかしこまって言われて。困った。