それで感謝されて良いのかどうか。悩んだけど、落ち込みそうだから考えるのは止めた。
学校から帰って来た彼女は、ピンポン鳴らしもせずに鍵開けて入ってきて真っ直ぐ俺の横来て。
「あは。ちょっと気楽。」微笑して。瞳の明るさが増してて。その顔見ただけで『よかった』と。
ちょっとでもいい仕事探したいから高校いきます。彼女の出した結論。俺は頷くだけで。
市営の方行って、夕食一緒に食べながら、いつになく饒舌に話すお婆さんがいて。
「母親も高校も行かんと働いてさっさと結婚したけんね。そがいなるんやないかってね。」
そんな心配もしてて。となると俺も心配のタネだったのかなと思って。とりあえず謝ったけど、
「なに、謝る言う事はあんたそんな気でおったの?」突っ込まれて思わず彼女の方見たら、
食事の手止めて横目で見上げられてて。完全に俺の答え待ちで。何故か、何か変な汗かいて。
お婆さんに「本気で考えんでも。」そう言って貰って助けられたけど、彼女は納得して無くて。
部屋帰って座ったらつんつん、と肩つつかれて「ちょっとは考えてました?」じっと見つめられて。
全く頭になかった事だから「…まだ。」そう答えた。彼女はちょっと溜息っぽく息吐いて、
「…私ちょっと考えてました。」中学出て六月で十六歳だからとか色々言ってたけど最後に、
「でも便りきりじゃダメだし。自分で働いてご飯食べれるようになってないと、ですよね。」
真面目な顔で言った彼女が、可愛くて。「うん。それまでがんばろ。」口突いて出た言葉がそれで。
「お願いします。」やっぱり真面目に返されて。俺も適当じゃいけないなと。腹が決まった。
進学決めたからには、彼女も受験生。三者面談とか進路指導とか本格的に始まった。
進路に選んだ高校は彼女の成績からしたら普通にやってればまず落ちないレベルだったし、
学費とかの事も福祉科の担当さんに相談したら「勉強頑張ってください。」だけで、簡単にOK出て。
進学に関する金銭的な事はクリアできて一安心。お婆さんが凄く安心してくれて。
俺が彼女の一家に会ってからその時までは、常に何か不安とか心配とか抱えた状態で。
やっと訪れた、直面してる問題が無い状態。とりあえず何も心配する事が無い日常。