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女「・・・やっぱり全然勉強進んでなかったわね」
男「うるせーな、今日からちゃんとやるつもりだからいいんだよ」
女「やらない人はみんなそう言うのよ。あなたの苦手な歴史科目は重点的にやるわよ」
男「お前、なんでオレが歴史苦手って・・ああ、ノート見たからか・・・じゃなくて!なんでお前がオレに勉強教える感じになってるんだよ!」
女「静かにしなさい。ここ、図書館よ」
男「・・クソが」
女「・・・部活禁止期間の今、あなたに階段を降りる手助けをしてもらう理由がないわ。だから、そのお礼に勉強を教えます」
男「・・・そうかよ」
女「・・まずあなたが授業中寝てて板書を写してないところを、私のノートから写しなさい。結局定期試験は授業で先生が言ったところから出るのだから、ノートをちゃんととってそれを覚えるだけで7割は取れるものよ」
男「つーか、なんでオレが授業中寝てること知ってるんだよ」
女「カンよ。やっぱり寝てたのね」
男「・・・はぁ・・・」
女「とにかく、今日は、全科目ノート書いてないとこ写し終わりなさい」
男「まじかよ・・・」
女が差し出したノートに並んだ文字は、まるで教科書の印刷のように整っていた。
しかも板書だけでなく、授業中に教師が口頭で言ったであろうこともメモされていた。
いわゆる優等生ノートというやつだ。
足が不自由で、体育も部活も出られない。
そういう環境なら、確かにこうなるしかないのかもしれないな、とオレは妙な納得をした。
写す作業だけだから、そんな余計な事を考えながら手を動かしていた。
気が付くと、夏の近い空も西日が傾きかけていた。
ガラガラ
女母「・・あら」
女「あ」
男「ん?」
女母「まだお勉強中だったかな?」
女「えっと・・」
男「いや、もう終わる・・・ってか、お前の母さん?」
女「うん」
女母「あなた男君かしら?」
男「あ、はい」
女母「やっぱり。最近うちの子がお世話になってるみたいで、お礼言わなきゃと思ってたのよ。いつもうちの子を助けてくれてありがとうね」
男「あ、イヤ別に。オレも色々世話になったんで、そのお礼みたいなもんです」
女「えっと、終わったの?」
男「あ、おう」
女「じゃ、じゃあ帰りましょう。もう遅いし。お母さんも、図書館であまりうるさくしないで」
女母「あら、そうね」
男「よいしょ・・じゃあオレ階段の下にいるから」
女「・・・うん」
男「あ、鍵」
女「あ、うん。ありがとう」
女母「大丈夫?」
女「うん。一人で降りられるから」
女母「うん」
男「じゃあ、俺帰るから」
女「あ、はい。さようなら」
女母「女ちゃん」
女「なに?」
女母「お勉強教えてるの?」
女「うん」
女母「そうなんだ」
女「?」
女母「・・・じゃあうちも帰りましょう。車乗って」
女「うん」