男「・・・」
カリカリ・・
女「ねえ」
男「・・ん?」
女「今日は金曜日なんだけど」
男「知ってるけど」
女「あなた、土曜はどうするつもりなの?」
男「どうするって、何が?」
女「世界史も日本史も、覚えきれてないでしょう?テストは月曜からなんだけど、このままでは高得点はとれないわよ」
男「いや・・オレ別に高得点目指してないんだけど。赤点じゃなければそれでいいし。ていうか、お前が心配することじゃないだろ」
女「ここまでちゃんと教えたんだから、高得点とってもらわなきゃ私の気分が悪いわ」
男「なんだよその理屈。てか、お前のせいで今までにないくらいテスト勉強させられてるから、それなりに高得点はとれんだろ」
女「ダメよ。歴史系科目に明らかに穴があるでしょ」
男「赤点じゃなけりゃいーだろーが」
女「ダメよ。だから・・・・土日はうちで勉強しましょう」
男「は?」
女「家の場所分からないと思うから、明日はお母さんがあなたを迎えに行きます」
男「は?・・なに?マジで意味分かんねーんだけど?」
女「連絡を取り合うため、携帯の番号を教えなさい」
男「いや、お前・・・ていうか、そこまでしてもらう義理は無い」
女「・・・・お母さんに、あなたに階段を降りることを手伝ってもらっていたことを言ったら、お礼がしたいから家に連れてきなさいと言って聞かないのよ・・・」
男「・・・・・・はー」
オレと目を合わせない女の顔からは、どこか困ったようにうつむいた表情が見て取れた。
さっきの強引な物言いも、おそらくは母親からの言づけを直接オレに言うのがもどかしかったからだろう。
もう充分赤点回避の可能性を感じていたオレからすれば、迷惑極まりない話だったが、女の母親の気持ちも分からないでもない。
それに、ここでオレが行かなかったら、こいつの母親は自分の娘が学校内で友人にどう思われているか、という点について、良からぬ勘違いをするかもしれない。
なんとなくそれは嫌だったので、オレは諦めのため息をついた。
男「赤外線。オレが送信でいいか?」
女「・・・へ?」
男「ケータイだよ。連絡先交換すんだろ?」
女「あ、うん」
男「明日の時間は、家帰ってから連絡するんでいいか?」
女「・・・ええ」