え、こんなところで…どうしよう?と思ったのもつかの間、
彼女が運転席で「誰かを乗せてしまったみたい…」と言いました。
「え、うそ?」と私はパニック状態に陥りました。
私は助手席に乗っていたのですが、恐くて後ろを見ることができません。
「どこか行きたいところがあるみたいだから、送ってあげる」
彼女がそう言ったとたん車がまた動きだし、しばらく走った後ガタガタといって止まりました。
「ここみたいね…」
「そんな落ち着いた声で恐いこと言わないでちょうだい」という私の言葉も聞かず、
彼女は冷静に「降りてください…」と、ドアを開けて言いました。
私はもう、神様仏様、お願いですから降りてもらってください…と念じるだけ。
必死の願いが通じたのか、車の後部座席から何か白いものが、飛ぶような速さで前方の一角に消えました。
彼女がライトで照らすと、そこにはお地蔵さんがあったのです。
「ここに来たかったのね…」と彼女。
私はもう何も言えず、とにかく山を越えて、無事目的地に着くことばかりを祈っていました。
鳥取では砂丘を見て海で泳ぎ、平穏に過ごしました。
帰りは格別恐いこともなく、無事に家に到着。
彼女とはその後、だんだん疎遠になりました。
それ以後、私の夢に彼が現れることもありませんでした。