あれは俺が高3の夏だった。
父と母が海外旅行で留守なのをいい事に、
俺は連日予備校の夏期講習をサボってバイクを乗り回していた。
バイクは車に行った先輩のお古を5万のある時払いで買って、
仲間の家に置かせてもらっていた。
俺がバイクに乗ってるなんて知ったら親も卒倒しただろうね。
ユカリさんは俺たちの飯の世話なんかの為にうちに泊まっていた。
妹は大喜びだったけど、俺は家に居たくない気分だったんだ。
普段あまり乗るチャンスがないので、少しでも多くバイクに乗りたかったってのもあるけど、
近くにユカリさんがいるっていうだけでムラムラするし、
そんな自分の邪な内心を悟られるのが嫌だったからね。
仲間や先輩の所に外泊しながら、バイクを乗り回し始めて何日目だったかに、
俺は自爆事故を起こしてバイクを売ってくれた先輩の車で病院に運ばれた。
バイクは全損だったけど俺自身の怪我は肋骨にヒビが入ったのと打撲程度だった。
仲間が病院から家に電話をしてくれて、
ユカリさんが保険証とかを持って迎えに来てくれた。
レントゲン撮影だのCTだのの検査をして、
処置室でシップや包帯を巻かれた俺が待合室に行くと、
目を真っ赤に腫らしたユカリさんが待っていた。
彼女は俺の顔を見るとプイッと会計の方へ行ってしまった。
仲間の話だと、かなり取り乱して入ってきて、
俺が出てくるのを待っている間ずっと泣いていたそうだ。