思い出の曲を静かに歌う妹とその歌声に耳を傾ける父。
「お馬の親子」という曲は
父がまだ幼かった妹を背中に乗せて歌っていたのです。
散歩に出かけた時も手をつなぎながらいつも一緒に歌っていました。
父が携帯電話を持った時、
妹は父からの着信音を「お馬の親子」にしていたくらいです。
父が亡くなった日の夕方に、
父は妹に「休め」と口の動きで伝えていました。
それを見て、妹は渋っていたのですが、
父がしつこくいうので付き添いの人用の仮眠室に行ったそうです。
そして、父は亡くなってしまいました。
妹以外の家族と兄弟たちに見守られて旅立ちました。
仮眠室で眠っていた妹が起こされ、
父のそばに行くと手を握りながら大きな声で
10分くらい大泣きしていました。
病棟に響き渡る大声でしたが、
妹が父のことで泣いたのはそれっきりでした。
葬儀の最中は家族が悲しみに暮れて涙を流していたのですが、
妹はいつものように笑顔を見せていました。
母が「父さんがタヒんだのが悲しくないのか?!」と
妹に言っていたのですが、妹はただ笑うだけ。