ただそれとは引き換えに、1年経って生活の目途が立たないのであれば地元に
帰れと言われていたそうだ。目的もなしに上京したって、1年やそこらでフリーター
生活に劇的な変化が訪れるはずもなく、1年後の今年の4月、両親からの仕送りは
ストップした。しばらくの間は母親が内緒で仕送りをしてくれていたようだが、
それもすぐに父親にバレてしまい、美紀は生活に困ることとなった。
結果その足りない生活費を補っていたのが俺からのメール料金だったわけだ。
そして川嶋さんの口からは、俺にとっては最悪の話が飛び出した。
「ミカは今週実家に帰ったの。だから先週でアルバイトも止めたし、先週の金曜日は
ミカの送別会だったんだ。」
先週の彼女の泥酔の理由がこれでようやくわかった。そして彼女は俺とは
メールの外では、関係を築けないことを知っていた。あの日の暗い表情の
理由がだんだんとわかるような気がしてきた。
でもだからと言って、なんで俺とのメールを止めなきゃいけないんだ?
元々実際に会うことなしに築いてきた関係なんだ。今更住んでる場所が
離れたって関係ないじゃないか。
これが俺の正直な気持ちだった。何故俺との関係をこんな風に絶たなければ
ならないのか、その理由をきちんと知りたい。川嶋さんにそう告げると、彼女は
美紀に連絡して、今日俺が店に来たことをミカ(美紀)に伝えると約束してくれた。
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「ずっと横から見守ってきた立場としても、こんな終わり方じゃ気持ちが悪いしね」
その時川嶋さんは、俺にとっての救いの神だった。
こうしてこの週の週末は終わり、またいつものように平日が始まり出し、会社と
家を往復する単調な日々が始まった。単調とは言っても仕事はその週とんでもなく
忙しく、美紀のことを考える暇さえなかなか与えない環境は、返って俺にとって
ありがたかった。
そしてその週の金曜日、川嶋さんからメールが届いた。
「ミカからの手紙を預かってるんだけどどうする?」
本来、更に俺の家に郵送してもらうのが一番迷惑がかからないのだろうけど、
その時の俺にはそんな余裕はなく、その日の9時にバイト先のある駅で
川嶋さんと待ち合わせをした。
仕事はたくさん残っていたけれど、周囲に謝り倒して無理やり会社を出た。
駅の改札にはすでに川嶋さんが待っていて、青い便箋を俺に渡してくれた。
