俺はそれで納得し、あとはお互いにスカイプの捨てIDを登録してメールで連絡しあった。
ログインしてPCの前でしばし待つ。
美紀らしい人物から承認依頼が来て、OKをするとすぐにコールが鳴った。
「もしもし」
「はい」
「もしもし、隆、聞こえる?」
何のためらいもなく呼び捨てにされる。まあ擬似恋愛なのだから
「さん」づけや「君」づけではおかしいんだが。
「うん、聞こえてる」
「どう?ちゃんと女の声でしょ?」
「うん、女の子だね」
「疑り深いねえ、まあ仕方ないけど」
意外と若い声。ちょっとギャルギャルしい話し方。
俺とはあまり縁のないタイプの人種。
「若いね、声とか話し方とか」
「そうかな?でももうこれ以上は無しね。ケーヤクガイだから。ではとりあえず
3日間、メールよろしく。」
挨拶をしてスカイプは切れた。意外とサービス内容については厳しいようだ。
まあメールの方で品質が伴えば問題はないんだけどね。
コンビニ飯を腹に納めながらテレビを眺める。
しばらくしてメールが着信。
「女だってことは納得してもらえたかな?もう寝るね。オヤスミ」
元カノと別れたのが社会人になってすぐの頃だから、約1年ぶりの
オヤスミメール。
「オヤスミ。その内、顔も見せてもらいたいな」
調子にのって写メを要求してみる。
「顔は無理~。今度こそ本当にオヤスミ」
メールのやり取りだけだと完全に恋人気分。
これなら2万払ってもいいかなと思う。寂しい男だと思われるだろうけど
女運と言うのは一度離れてしまうと中々戻ってこないもの。
最近じゃ合コンの誘いも少ないし、仮に誘われてもドンドン消極的になってる自分がいる。
その夜考えてたことは、お金の支払方法。
まさか携帯会社から請求はこないだろうし、カード決済も無理だろう。
そうなると振込みか手渡しになるのかな。などなど。
お金で手に入れる奇妙な関係。傍から見ればこれほど虚しいものは
ないんだろうけど、俺はまるで久しぶりに彼女でもできたかのような気分で
久しぶりに上機嫌で眠りについた。
翌朝はいつもどおり6時起床。朝食は食べない方。
7時ちょい過ぎの電車に乗って出勤。
8時近くになって、まだ次第に混雑がひどくなる電車の中で携帯が震える。
「おはよー。もう起きてるよね?出勤途中かな。仕事がんばってね」