瞳孔が開いた目ってのを初めて見たような気がした。
気が付いたら、私子は彼男に襟首を掴まれてファーストフード店内の壁に叩きつけられていた。
別れ話をファースト店でして正解だったな。
二人っきりの場所でなくて良かったな。
なんとなくそう思いながら、視界が狭まっていったのを覚えてる。
実際は気を失うというほどでもなかったし、失ったとしても1秒もなかったようだ。
店の人が倒れた椅子やテーブルを片づける横で、見知らぬ女性に介抱してもらった。
彼男はいついなくなったのか分からない。
電車で可愛子を見かけてから一週間目の出来事だった。
私子を清算した彼男は、そのまま可愛子に告るのかとおもいきや。
ただ同じ電車に乗り続けただけ。
フリーになったんだから堂々と付き合えるはずと胸張って、
可愛子とラブラブになるのを夢見ながら待てど暮らせど夢は叶わない。
ラブラブどころか存在すら認識してもらえない日々が続いたようだ。
その愚痴が知り合いの知り合いを伝って耳に入ってくる。
いったい何をやってんだとは思ったが、関わり合いのないことだったので放置した。
ほどなくして、可愛子ほどじゃないがこれまた綺麗な女の子に呼び止められた。