【クレヨンしんちゃん】しんのすけ「……父ちゃん、母ちゃん。ひまわりは今日も元気です。――行ってきます」誰も知らない22年後・・・

「――うわあ!しんのすけさん、見てください!海がとっても綺麗です!!」

電車を降りると、目の前には一面の海が広がっていた。
その駅は、海岸沿いにある小さな駅。駅員はいないようで、いわゆる無人駅のようだ。
降りたのはオラ達だけ。……というより、ここまで来ると、電車に乗っているのはオラ達だけだった。
ボロボロのホームにも、オラ達しかいない。
高台にあることから、裾には景色が広がっているが、遠巻きに見ても誰もいない。

……それにしても、駅からの光景は、オラですらも声を漏らしてしまうものだった。
見事に晴れた空と、空の色を写した海は、遠くに見える水平線で交わる。
空気には潮の香りが漂い、遠くから波の音が微かに聞こえていた。

まさに、この絶景を独り占め……もとい、二人占めしている気分だった。

「しんのすけさん!早く早く!」

あいちゃんは、オラを駅の出口へ引っ張っていく。

彼女は、白いワンピースを着ていた。ひまわりの服だ。
もともと肌の白い彼女は、その服がよく似合う。少し大き目の帽子を被っていて、まるで避暑地に来たお嬢様のようだ。実際にお嬢様だけど。

それにしても、こうやって間近で見ると、やはりあいちゃんはかなりの美人だと分かる。
電車に乗っていた時も、彼女はジロジロと見られていた。
電車の中で不釣り合いなほど、彼女だけ別の世界の人間のように思えた。

そんな彼女と二人っきりでいることに、少しだけ違和感を覚える。
それほどまでに、彼女はまるで絵本の中から跳び出して来たかのように、純然とオラの前にいる。

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